【男性不妊】でよく使われる漢方薬ってどんな薬?7(牛車腎気丸)
2016-09-01
こんにちは!
馬場聖鍼堂 男性不妊担当の万木祥太郎です。
9月に入りました。
とはいえ、まだまだ残暑が厳しいですね。
台風も立て続けに到来しましたし
これからも注意が必要かもしれませんね。
さて、僕のメルマガでは男性不妊で使われることの多い漢方薬を
鍼灸師目線で東洋医学的に解説するシリーズをお届けしています。
今回は7回目です。
前回まで、【補中益気湯】、【八味地黄丸】、【柴胡加竜骨牡蛎湯】を
それぞれ2回に分けて解説してきました。
男性不妊でクリニックで処方されるものは
この3種のうちのどれかということが多いです。
実際、当院の男性ゲストがクリニックで処方されていた漢方薬も
この3種のどれかということがほとんどです。
ですので、今回から解説していく漢方薬は
ちょっとレアなケースになってくるかもしれません。
今回は【牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)】という漢方薬を解説してみます。
なかなか仰々しい名前の漢方薬ですよね。
このメルマガをずっと購読頂いている方なら
もしかすると「腎気丸」という名前に見覚えがあるかもしれません。
以前、【八味地黄丸】を解説した時に
【八味地黄丸】の別名として【八味腎気丸】を紹介したのですが
実は、単に【腎気丸】とも呼ぶこともあり
一般的に「腎気丸」というと、【八味地黄丸】のことを指していることが多いです。
つまり、今回ご紹介する【牛車腎気丸】は
【八味地黄丸】+“牛”+“車”
ということです。
“牛”と“車”はそれぞれ生薬をあらわしていて
牛は、【牛膝(ごしつ)】
車は、【車前子(しゃぜんし)】という生薬です。
ということは、【牛車腎気丸】の効能は
【八味地黄丸】の効能に【牛膝】と【車前子】の2つの生薬の働きが
加わったものということですね。
ここで、いつものようにT社の説明書にある効能を確認してみましょう。
そこには概ね次のように書かれています。
“疲れやすく、冷えやすく、頻尿または多尿で口が渇く人の
下肢痛、腰痛、しびれ、老人のかすみ目、かゆみ、排尿困難、頻尿、むくみ”
大凡、加齢による諸症状と捉えることができるかと思います。
ぱっと見では、男性不妊と結びつきにくいかもしれませんが
東洋医学で加齢というと、腎臓の元気が低下していることをあらわします。
腎臓は、東洋医学では、生命力や生殖力を担当している
妊活にはとても大事な臓器で
精子力もこの腎臓の元気と大きく関係しています。
つまり、こういった症状を改善することは
腎臓の元気が補われることになり
精子力のアップにもつながるということです。
では、【八味地黄丸】とは何がちがうのでしょうか?
【牛車腎気丸】に加えられた2つの生薬の働きから考えてみたいと思います。
<車前子(しゃぜんし)>
利水に効きます。
身体の中の水のめぐりをたすけ、不要な熱を冷ましたり、痰を出したり、利尿作用があります。
<牛膝(ごしつ)>
血のめぐりを活性化して、オ血(おけつ)を改善したり、利尿作用もあります。
つまり、【八味地黄丸】の効能に、利水・利尿&活血作用が加わったものが
【牛車腎気丸】ということですね。
【八味地黄丸】で腎臓の陽気は補われたけど
血行が悪く、まだまだ身体が冷えやすかったり、
尿の出が悪い、むくみがきつい
という方に適応となる漢方薬といえると思います。
男性不妊では、精子の運動率が低く
【八味地黄丸】でも冷え症やむくみ、尿のトラブルが改善しない
という方向けかと思います。
ちなみに、こういった生薬ごとの効能というのは
鍼灸治療では、配穴(=治療するツボ)に置き換えて考えることができます。
実際に鍼灸治療をする際は、ゲストの体質やその時の体調などを考慮して
どのツボに対して、どのように治療するのかを決めるのですが
その選択次第では、漢方薬と同じ方向性で治療することができます。
鍼灸と漢方薬の相性が良いのはこのためで、
どちらも全く同じ方向性でアプローチすることで
相乗効果を期待できるんですよ。
ということで、今回は【牛車腎気丸】を紹介&解説させていただきました。
参考にしていただければと思います。
なお、このメルマガは、個人の判断で漢方薬を服用することを
勧めるものではありません。
体質によっては、合わないということもありますので
服用に当たっては、漢方薬局などにご相談されることを
強くオススメします。
ちなみに、当院では提携している漢方薬局がありますので
当院で鍼灸治療を受けながら、漢方薬局から鍼灸治療と同じ方向性で漢方薬を処方してもらうことも
可能です。
お気軽にご相談下さいませ。
では、今回はこの辺で。
次回は岡井先生が担当です。
どうぞお楽しみに!